<第1027話>
黒潮躍る南海の土佐の国、海に酒をそそぐ老婆の祈りは、かつて舟で出漁したきり帰らぬ息子の安否であった。その妹を嫁にねらう網頭が、鰹節の秘伝と利権をねらって悪奉行と組んだ恐ろしい企み。半年前に出漁した舟に仕掛けられた秘密を探った黄門さまの力は、摩訶不思議、死んだはずの息子が生き返り婚礼の席は一転大騒動。
<第1028話>
伊予は山国木材の名産地、だが山持ち地主と樵達は犬猿の間柄。対立の最中で地主の娘と樵頭の息子が恋仲、駆落ち寸前を黄門さまに止められたが、その時地主の息子が殺された。下手人の疑いで捕まったのは樵頭の息子、その表に糸引く材木商と代官の悪巧みをお見通しの黄門さまの一計で、知らずに集った悪党一味に正義の鉄槌が下る。
<第1025話>
淡路島で虚無僧と鳥差しの不思議な決闘。弥七とお新が、今際の虚無僧からたのまれた密書は、領内百姓の不穏な形勢を伝えるもの。名主の娘が恋する漁師の息子はその父親と共に公儀が放った里隠れの忍び者。黄門さまは百姓達を死地に追いやる悪家老の暴政を暴き、忍びの掟を越えて若い二人の愛情を実らせる淡路島の大活躍。
<第1026話>
四国に渡った黄門さまが旅の噂に聞いた我が子高松城主松平讃岐守の悪い評判。父親を真似て、家来二人を連れて領内おしのびの見廻りに領民達は大迷惑。高松に乗り込んだ黄門さま、世間知らずの殿様を踊らせて私腹を肥やす悪人を取り押さえ我が子に振るう愛の鞭。そこに親子の断絶はない、先の天下の副将軍黄門も人の親。
<第1023話>
泉州堺で知り会った若い盗人に盗賊の親分と間違えられた黄門さま。小盗人が目を付けた回廻問屋の金塊に不審を抱いて乗った仕事は何と土蔵破り。同じく金塊を狙う鳥追い女が、罠に掛けられて殺された親の仇討ちと判り、黄門さまの強行突破作戦。弥七の押えた金塊を証拠に抜け荷商人と結託して私腹を肥やす悪奉行を取り押える。
<第1024話>
弥七夫婦が、旅先で母親に死なれた男の子を助けたが、その父親は酒処灘で働く杜氏だった。黄門さまと共に、健気な造り酒屋の女主人を助け、商売仇のいやがらせから守り酒造りに協力する。ようやく新酒が出来る寸前、酒を腐らす企みに掛ったが、細工は流々。見事新酒造りに成功して、悪党一味をこらしめる、人の情の生一本。
<第1021話>
大和国吉野で行方不明の夫を探す武家の妻と老女中に出逢ったがその女は助三郎の剣術の師匠の娘。だが折しも獄門の刑に処せられる贋金作りの首領は何と探し求める夫であった。無惨に打ちひしがれた妻女の悲しみが助三郎の胸を打つ。その后代官所へ狩り出される野鍛冶の秘密を追い、金をめぐる奥深い陰謀に迫る黄門さま。
<第1022話>
奈良で黄門さまが求める墨造りの有名な老舗南都園。主人は頑固親父だが、やさしい娘と腕利きの職人は心が通う間柄。公儀納入の墨をめぐって利権を狙う商売仇が奉行所与力と企んで、主人を鹿殺しの罪に落とす。処刑が迫る危機一髪の刑場に乗り込んだ黄門さまの大奮闘。若い職人と娘の仲を結び、新しい紅花造りの墨を世に残す。
<第1019話>
熊野権現の御神域の中から現れた男、神隠しにあって一年、女房も子供も総てを忘れた記憶喪失。だが頭の古傷から不審を抱いた黄門さま、山番役人だった男の足取りをたどって苦心の探索。遂に御神木を盗み横流しする大掛かりな悪事を探り出し、ごうごうたる那智の滝の霊験は男の記憶を呼び戻す。そしていよいよ火祭りの日を迎える。
<第1020話>
紀州和歌山の城下で、餅食い競争でのびた八兵衛を介抱してくれたのは能の面打師の娘だった。折から殿様献上の面を打つ兄弟弟子の腕くらべ。藩の悪家老一味が競作にやぶれ破門された兄弟子を使い、面の裏側に細工させ殿様毒殺をねらう大陰謀。この事実を探知した黄門さまは誠実な弟弟子と娘を助け、能の舞台に自から舞って大活躍。